そこに、理解力の高い救世主が現れた。
「熊山“は”そうなんじゃないの。熊山は“生き物は”とか何とか言って、大袈裟にしすぎ」
クラスで一番冷静な男子、黒岩リョウが言い放つ。
急に会話に入ってきたことに、男子たちは少し驚いた様子を見せる。
が、熊山は違う所に驚きを見せる。
「え? そうなのか? 生き物は、何かを持ち上げることをエネルギーにして――……」
この場が、余計にややこしくなりそうな事を言い始める熊山の言葉を、黒岩が遮る。
「違う。少なくとも熊山は、何かを持ち上げることを楽しみとして、生きてるんだろ」
「そ、そうか……しらなかった」
一体全体、熊山はどういう生活をしてきたの? と問いたい。
多分、お母さんもお父さんも、持ち上げたりしているのかな……。
「黒岩、サンキュ」
男子たちのお礼に、顔色一つ変えずに時計の方に目を向けた。


