重衡はある部屋の前で立ち止まった。

「維盛、いるか?彼女を連れて来た」


すると、彼の呼びかけに応えるように部屋の襖(フスマ)が開かれた。

「すまないな…」

部屋の主である維盛が礼を言い、揚羽の方を向く。

「久しぶり…我が妻よ」

「………はい?妻?アタシが?アタシまだ結婚なんてしてないけど?下手なナンパならお断りだよ?もっと上手くなってから出直して」

潤ともまた違う反応に、傍で聞いていた重衡は苦笑した。

「これは…口説くにも骨が折れそうだ。頑張れよ」

「ああ」

二人をその場に残し、重衡は急いで自分の部屋に戻った。