跪いて、Kiss -episode 0-

「あー…でも伊都くん格好いいし、お金持ちっぽいし、よかったじゃん!雪乃!」



「………。」



俯いたまま微動だにしないあたしを心配してか、さっきまで伊都サマの座っていた場所に座り、あたしの肩に肩をぶつけてくる玲美。



「………」



「そーだよ!上手くいけば玉の輿だよー!玉の輿!」



「うんうん」



同じく心配してか、反対側に座り、あたしの体を揺する千紗と、座ったまま身を乗り出し頷くモモ。



「………でも、」



「「「ん?」」」



「でも、あたしの大切なファーストキス、アイツに奪われちゃうんだよ、ね?」



「「「あー…」」」



そう。あたしのファーストキスはアイツに予約済み。アイツ以外の人に…って、悲しいことに今んとこ予定はゼロだけど…。とにかく!アイツの以外の誰かとキスしようものなら……うん。怖くて考えたくもない。



でも、それでも…



「アイツと同じ学校に通って、」



「あっ!でも、雪乃からキスしてって言ってくるの待つって言ってたし、」



「パシられて、罵られて、キスされて…」



「あっ!でもでも、雪乃に迫ってた時の伊都くん、本物の王子様みたいだったし、雪乃の夢、叶うじゃん!」



「そーだよ!やったね、ユキちゃん!」



「………無理」



「え?」



「やっぱ無理ー!!!」



うん。そんなの耐えられない。絶対、無理!!