夜はめっきり冷える季節だ。
帰途につくサラリーマンたちの歩みも、心持ち早い。

普通、参拝客が途絶え灯りを落としたこの時刻の寺院は、静寂に包まれる。

だが慈龍寺は違う。

正門が閉じられ、駐車場を囲む木々に隠されるように存在する、背丈の低い裏門の鍵が開けられると、僧たちは活発に動きだし、その真の姿を現す。

僧と言っても、誰も昼間のように袈裟を纏っている者などいない。
ジーンズ、ランニングシューズ、スラックス、時にはジャージ姿の奴も。
皆思い思いに動きやすく街に溶け込みやすい格好で、それぞれの任務にあたる。

駐車場にバイクを停め、隠し扉のような裏門を少し身を屈めてくぐった景時も、制服の上にレザーブルゾンを羽織っただけの、とても坊主には見えない装いだ。