幸せまでの距離


リクは強く想いを走らせた。

遠回りしているように見えて、自分達は ちゃんと前に進めていた。

絶対に幸せになってみせる。

メイを幸せにするのは自分の役目だ。

「ううん。俺はもう、幸せだ」

リクは吹き出すようにつぶやき、腕の中 にいるメイの頭をなでた。

「だって、メイがいるんだもん。

幸せって、全力でつかみにいったり人か ら奪うものじゃなくて、自分の心で感じ るものなのかも」

「私は何も感じないけど」

そっけなく言いながらも、メイは今まで にない安心感を感じていた。

リクのぬくもりは、無条件に愛を与えて くれているようで。

ただそこにいるだけでいいのだと、言わ れている気がした。

メイは、自分の中にしょっちゅう現れる 死にたい気持ちが遠ざかるのを感じた。

「メイが幸せを感じられるように、一生 俺は、メイのそばにいる。

約束のしるしとして、抱きしめ返してほ しいな。

そしたら俺、もっとがんばれるから」

リクは言い、メイを力一杯抱きしめた。

今までそばにいたのに触れられなかった ぬくもりはとても柔らかくて、思ってい たより小さく、そして、いい匂いがし た。