わたしのピンクの錠剤

 
愛子に再会したのは研修医をやっと終えた頃だった。

愛子は下平達哉と不妊治療に来たんだ。

そう、お父さんはそれまで愛子が結婚していたことも知らなかったし、愛子もその病院にお父さんがいるなんて想像もしなかっただろう。


もちろん、別の先生に替わってもらおうとしたんだ。

考えてもみろよ。

同級生に診せるんだぞ。

恥ずかしいに決まってる。

お父さんだって、恥ずかしくないって言ったら嘘になる。


でも、愛子は替えないでくれって言ったんだ。

お父さんの方が良いって言ったんだ。




誘ってきたのは愛子からだった。


不倫の関係といえば、その通りなんだけど、二人とも決して気持ちに嘘はなかった。

お父さんにすれば、片思いだった初恋の人だし、初めての恋人、いや愛した人だったんだ。