「お父さんが殺したの?」
「ば、馬鹿なことを言うな」

「今日、藤島数子さんに電話したんだよ」
「誰だ、その人は」

「母子健康手帳の人」


親父は思い出したように目だけ押入を見た。

「見たのか」

わたしは頷いた。


「ま、まさか、下平にも電話したのか」

親父はいきなり怒鳴り声をあげた。

わたしは突然のことに驚いて、声も出せずに首を何度も横に振った。


「下平には絶対に連絡するな。わかったな。絶対だぞ」



親父の激しい剣幕に涙があふれてくる。


「どうして?どうしてそんなにおこるの」
「怒ってるんじゃない。ダメだって言ってるんだ」


「いつもダメだダメだって。なんにも教えてくれないじゃない。わたしは本当のことが知りたいだけなのに。おねがいよぉ、本当のことを教えて」