「トイレにもお風呂場にもいなかった。ケータイも出ないんだ」
わたしはじっと鍵を見つめた。
二人の関係など、わたしにわかるはずもない。
ただ、美智子先生が遠くに行ってしまったような気分だった。
加藤先生に取られたような心持ちだった。
加藤先生はわたしから美智子先生のことを聞き出すと、わたしのことには興味がない風で、あっさり立ち上がった。
わたしは玄関まで見送る。
すると、運悪く、親父が帰ってきた。
しかし、加藤先生は親父と話す気はないらしく、早々に靴を履き、親父と入れ替わるように外に出た。
「明日は出てこいよ。それとその先で殺人事件があったのを知ってるか。物騒だから一人で出歩くなよ」
最悪。
先生ったら、余計なことを言う。
今日、学校にいかなかったのが、親父にバレたじゃない。