気付くと、親父は帰っていた。

震える手を閉じたり開いたり、それを何度も繰り返している。

親父の呼吸音がハッキリ耳にできる。

なにか、呼吸の仕方を思い出そうとしているかのような息づかい。


「お父さん」


気の毒なほどにびっくりして、親父は振り向いた。

その顔は真っ青で、声を掛けたわたしの背筋が、凍ってしまいそうだった。