思えば愛子の記憶は私を憂鬱にしてきた。

その上、思いだしたばかりの殺戮の記憶は、頭から離れることなく、私を苦しめる。



「私はどうしてここにいるんだろ。

 愛子の濡れ衣をはらすため?

 そんなことのために私はここにいるの?」



私は親父の肩の上に寄りかかるように頭を置いた。


「そうか、おまえも辛いんだな。でもな、愛子が真犯人じゃなかったら、俺はもちろんのこと、あいかが一番に救われるんだよ」



親父は手を回し、私の頭を撫でた。


「そうだよね。これでよかったんだよね」

「そうさ、何も間違っちゃいない」



私は親父の肩に顔をうずめ、「うん」と頷いた。