私に愛子の記憶が舞い降りた。
「待って。話を聞いて。ちょっと、逃げないでよ」
「逃げてなんかいないだろ」
「いえ、逃げてます。私が何を尋ねても、今まで一度だって、ちゃんと答えてもらってません」
「そんなこと、ないだろ。言ってみろよ。何が聞きたいんだ」
「どうしてあなたがそこにいなくちゃいけないのかってこと」
「ほう、愛子ちゃん。今日は挑発的だねぇ」
「もう、限界なの。せっかく赤ちゃんを授かったっていうのに、達哉の気持ちがどんどん離れていって・・。それもこれも全部、あなたのせいじゃないの」
「よく言うよ、愛子ちゃん。俺が本当のことを知らないとでも思ってるの?浮気は良くないよ」
「うそ、達哉も知ってるの?」
「知らないとでも思ってた?」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないの。達哉だって浮気してるじゃない」
哀哉の顔がくもった。
「まさか、達哉じゃなくて、あなたが浮気してたの?」
「俺だって浮気なんかしてないよ。ずっと愛子ちゃん一筋だからね」
「やめて。そんな冗談、聞きたくもない」
「冗談か、そうだな」


