「先生、水くさいじゃないですか。連絡してくだされば良かったのに」
「まあ、そういうわけにもいかんだろ」
「あいかちゃん、大きくなりましたね」
「ああ」
黒木の狙いはわかっていた。
「金はない」
「いやですねぇ、先生。誰もそんなこと言ってないじゃないですか。先生に働き口を紹介して差し上げようと思いましてね。悪い話じゃないと思うんですけど」
紹介料を病院側からふんだくった挙げ句、俺からもじっくりと巻き上げるつもりなのか。
「有難う。でも、まだ医者に戻るつもりはないんだ」
「そうですか。まあ、それなら仕方ないですよね」
黒木はニヤリと嫌な笑顔を見せた。
「ああ、そうそう。病院であいかちゃんと会ってから仲良くなりましてね。今度会ったら、いろいろと昔話をして差し上げようと思ってるんですよ」


