時間が止まってほしい。



今、心からそう思う。



でもそんな小さな願いでさえ、誰も叶えてくれる人なんていなくって



秒針はいつも止まらずに



カチカチと小さな音を立てながら、後ろを振り返らずに



ただ前だけを向いてゆっくり……でも確実に進んでいる。



時計を気にしていたあたしは……気付かなかった。



無意識に佑輔のシャツをぎゅっと掴んで"行かないで"と



口に出して言ってるかのような行動をとっていたことを。



「未紗?」



あたしの様子がおかしいことに気付いた彼は



こんな時に限って優しくあたしの名前を呼ぶ。



"お願い、遠くに行かないで"



ともうすぐそばまであたしの声は出かかっていた。