玲ちゃんが終わって、今度は私の番。 本当は直子だったんだけど、玲ちゃんが私に「やれよ」と言って、私になった。 私が演奏を始めると、先生が首を傾げた。 「香織ちゃんね、うまいんだけど、もう少し曲調を表に出せないかな?」 …玲ちゃんと違って、私にはピアノの才能がない。 表現なんて、もってのほか。 「こうやるんだよ」 玲ちゃんが私の後ろから鍵盤に触れた。 傍(ハタ)から見たら玲ちゃんが抱き着いてるように見えるんだろうな…。