リュウ達のステージが始まった。
この日、ラストから二番目。

あたしは絶対にミスれない。
この時ばかりは
後で皆をがっかりさせない為、

軽快なヒップ・ホップも耳に入らない程
集中して皆をビデオで追い続ける。

中盤になると客席は総立ち、
中には彼ら目当てのファンも多いらしい。

ソロも全員ばっちり撮れた。
後半もあと約1分を残す・・。

手入れされていないステージ真下、
木板がはめ込んであり
きっと間に合わせで作った感じの
踏めば浮いた音がして怖い。

それに注意しながら
無事フィニッシュまで撮り終えると
ホッと一息・・歓声が上がる最中
ステージ上のリュウと笑い合ってた。

ビデオもOFFにして引き返そうとしたら
どこかのコンサート会場みたいに
アンコールの声が掛かってきた。

後がいるからそれは無理だ・・
けれどファンは熱望のあまり列を押す。

「きゃ・・・!」

前を陣取っていた男の人達までが
押し返されて足元をフラ着かせたのだ。

柵はたったのロープ1本、
あたしはペケ印のペンキの着いた戸板を
勢い良く片脚で踏んでしまっていた・・!

・・ずぼっ。

斜め前を飛んで行く、
サイズの合わない板を見た。

(ビデオが・・・!)

近くにいた誰かを掴むのも忘れ、
咄嗟にビデオカメラを抱いた気がする。


ガコン・・・!

声にならない小さな悲鳴、一瞬体が
フワリと浮いたスローモーション。

背面跳びで飛び越えた後の、懐かしい感じ?


「・・・!!!」


かだだだっ・・!

畳約一畳分のスペース、ドブ臭い匂い。

サ・イ・ア・ク・・・。


「だ、大丈夫ですかっ!?」

「・・・。(-_-#)」


今頃、
場を収めようと出てきた司会者の
壇上からのマイクの声が降ってきた。

ふと手元を見た、ビデオは死守してる。


「おせーよ・・。」


身を起こそうとした時、
あたしの心の声を代弁する
耳に掛かったその声でハッとした。

何てこったい・・あたしは今、
誰かを下敷きにしているらしい・・。


今日は何だかトコトン、駄目な日?


「・・ご無事ですか? お嬢さん・・?」