翌朝・・
世間は休みでもあたしたちは仕事。

殆どの会社が休みだから
祝日のカフェは場所柄かなりヒマ。

「まだ、開いてないんか?」

口煩いジイ様の朝は早い。
カフェに似合わぬ作業服で
ミルクを届けるついでのモーニング。

バイトが相手を見てウロたえてる。


「店長~、どうしよう。
まだゆで卵ゆでてないし。」

「昨日のでいいよ。貸してみ?」

「でも~・・。」


パンを焼いてる間に
それを沸騰してないお湯に浸け
ほかほかのお絞りで巻いておいた。

ジイさまに
昨日茹でたものを出した日にゃ、
得意気にズバリ云い当てられて
文句をつけられてしまう。

前のこの店の店長3人は、
このジイさんに潰されたと云っても
過言ではないらしい。

ただ、
シャレの解らない石頭でもない。


「お待たせ♪」


バイト達もジイさんが苦手なので
あたし自ら、

トーストとサラダ、コーヒーの
シンプルなモーニングセットを
目の前のテーブル席へ持っていく。


「ん。・・タマゴは?」

「あるよ・・?」

「・・・・。」


ブラウスの胸元から
指先で摘み出す白いゆで卵。

ジイさんは口をフニャフニャと
ぱぁぁっと、顔を輝かせてる。


「チョト、暖ためといたから♥」


ニセ人肌・ゆで卵に
三回頷いて手をギュンと突き出した。

・・・チョロい。

お年寄りは大切に。
日頃から世話になってるし。

このジイ様を朝からハッピーにして
あげると売り上げに繋がる。

サイド・ビジネスのお客を連れて
応接間代わりにココを使ってくれるから。


「今日、売り上げ少ないの。」

とか云えば、取引先の連中に

「チケット買えや!(4千円也)」

なんて、薦めて?行って下さるし♪




「あ、アクドイ・・。」

「店長、悪魔みてぇ・・。」


そんなバイトの声も聞き逃さない。

電卓叩いて伝票整理する
その背中越しから。


「そこの2人。今日のまかない、
メザシ2匹で良かったっけ・・?」


「「 いえっっ・・! 」」


今日もイイ一日に
なりそうだと、思っていたのに。