隣の席のあいつ



そのとき、机の上から参考書が滑り落ちた。

分厚い参考書が叩きつけられる音が、教室に響く。




隣で寝ていた小畑が、むくっと身体を起こした。




・・・・・・ヤバ、起こしちゃった。




昨日は特別に起こしただけだけど・・・。

普段なら、私は寝てる人は絶対起こさない。

もちろん小畑でも。





小畑は少し眠そうな顔で、こっちを見た。





私は拾った参考書を抱えて、下を向く。

どうしよう、謝ろうかな・・・・・・。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよ」





え?

今、小畑が私に『おはよう』って言った?



間違いない。

今聞こえたのは、昨日昇降口で聞いた、あの声だった。




「お、おはよう・・・・・・」




びっくりしてそう返すと、小畑はまた眠そうに身体を伏せた。




初めて小畑から挨拶してくれた。

あの無口な小畑が。




どうしよう、すごく嬉しい。

なんでかわからないけど、すごく。




嬉しくて嬉しくて、誰かに話したいくらいだった。