あたし達は、桃香に見送られながら病室をあとにした。

外に出ると、冷たく小売りのような風が勢い良く吹いていた。


「寒いね。」


道を歩きながら、拓真への思いを捨て去るように拓真に話しかけた。

会話は長くは続かず、沈黙が訪れた。

そんな時、拓真は道の真ん中で立ち止まった。


「約束、守れなくてごめん。

あの時、言おうとしてた話って何?」


肝心なことを忘れていた。

あたしは、今日の映画の最後に拓真に思いを伝えようとしていたんだ。


だけど、そんなことはもうどうでもいい。

失恋するとわかっているのに、思いを伝える。

彼女になれる確率がないというのに、思いを伝える。

そんな惨めなことはできない。

そう思っていたはずだった。

なのにー。