「どうしたもんかなぁ~」
朝──志保は保健室で思案していた。
ここ一週間ほど匠という生徒を監視しているものの、これといったもめ事を起こす気配は見せない。
おかしいわ、わたしが聞いた感じではすぐに何か起こすかと思っていたのに……と、小さく唸る。
いざ接してみると、教師には丁寧に返すし言動はやたら上品だしで非の打ち所がない。
「もしかして、先生たちの間で話が膨らんで化け物みたいな人物像が生まれたんじゃ?」
彼は成績も優秀で、スポーツもほぼ苦手なものがない。
学園は、彼の争奪戦を他の学校と競い合ったと言うではないか──まさに天才少年なのだが、どうしてだか話題には上らない。