辺り一面に飛び散ったカフェモカの残骸を唖然と見ている俺。

だが、急いでそれを拭く為に布巾を取りに行こうとすると、誰かにぶつかった。

慌てて謝罪をすると、何処かで見た事がある人物が二人、そこに立っていた。


「ガーディアンレスキューです。
……って、また貴方ですか?」

「君、何かに祟られてるんじゃね?
疫病神的なの憑いてんじゃね?」


ケタケタと呑気に笑う高橋君の頭を、羽生さんが叩く。

良い音がしたとぼんやり思ってると、羽生さんが懐から何かを取り出した。

それは携帯端末だった。


「所で君、名前は?」

「……佐藤、正恭ですけど」

「佐藤正恭君ね。
一日に二回もトラブルに巻き込まれているし保護対象だが、どうする?」

「ど、どうすると言われても……」


羽生さんが携帯端末に何かを打ち込んでいる。

突然、ガーディアンレスキューの本部で一時的に保護と言われても実感が湧かない。

個人的には保護されたくない。


「本部は暇だから来ねー方がいいぞ。
割とマジで暇だから」

「高橋ぃ!
敬語を使え、敬語を」

「へいへい」

「誰かに怨まれる事をした覚え等はありますか?」

「いや、……特には」


その時、俺と酷似したあの彼を思い出したが、とりあえずややこしくなるので黙っておく事にした。

そういえば階段から落ちた時、どう考えても彼は俺の頭を思いきり蹴り上げたような……。


「本部に掛け合ってみましょうか?」

「出来れば掛け合って欲しくないんですが……」


もしかしたらただの偶然かもしれないし、何より保護されてしまったらその間、こんな日常を味わえなくなってしまう。

何故俺は、一日に何度もこんな不幸な事に出逢うのだろう。

まるでこれじゃあ、誰かが俺を殺そうとしているみたいだ。

……もしかして、彼は本当に俺の事が邪魔なのだろうか。

でもそれならば、始末する事は今まで何時でも出来た筈。


「とりあえず、本日は大人しく帰宅する事をオススメするわ」

「これ以上厄介事増やすなよ、トラブルメーカー正恭クン」

「高橋ぃ!
仕事しろぉお!」


呑気にキャラメルマキアートを飲んでいた高橋君に、羽生さんはすぐにツッコミを入れた。

俺は席に座って唖然としている皆に顔を向け、言った。


「俺、帰るわ」


二度ある事は三度あるというし、これ以上皆と居ると、また厄介事に巻き込んでしまう。

俺は机を拭き、布巾を返しに行って喫茶店を出た。

周りの視線が、痛かった。