Snow Drop Trigger

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「雪、止まないな……」


ようやく学校に到着した俺は、自転車を止める為に康介達と別れた。

自転車用の駐輪場は正門から入って大きなグラウンドの端っこを通り、俺達の教室がある校舎を過ぎ、さらに上級生の教室がある校舎を二つ過ぎた所にある。

つまり、かなり遠い。

ちなみにこの高校は学年毎に校舎が違い、移動教室も校舎内に全て揃っているので他級生に用が無い限りは校舎を渡り歩かなくても良いのだ。

一つの校舎を一学年が全て使用するので、一校舎が無駄に広い。

正門から入ってグラウンドの先にあるのが一年生の校舎で、それから後ろに行く度に二年、三年となる。

各校舎は渡り廊下で繋がっている。

一年生の校舎と三年生の校舎が離れている為、三年生の校舎から一年生の校舎に行くにはどうしても二年生の校舎を経由する。

なので自転車通学の生徒は駐輪場に止めた後に三年生の校舎から各学年の校舎へと進む事が多い。


「鍵……」


俺は自転車の後方に着けている小さなテディベアのキーホルダーにSnow Phoneを翳した。

すると黒かったテディベアが、赤に色を変える。

テディベアのキーホルダー型の鍵は今や自転車を持っている生徒にとってはかなりの重宝だ。

自身の携帯端末が鍵になる時代のこの世の中、やはりSnow Drop製品はかなりの割合で普及している事実を改めて認識する。


「間に合うかな……」


携帯端末の画面の上に表示された時刻は8時20分。

後10分でHRが始まってしまう時間なので、俺は急いで三年生の校舎へと足を進めた。

ブレザーのポケットに携帯端末を入れずに握りしめながら、ようやく三年生の校舎に入る。

靴箱に設置してある機械に携帯端末を翳すと、自分の顔写真と自分のクラスと校舎に入った時間が記録される。

そして一年生の校舎の靴箱から転送されて自分のスリッパが下の取り出し口から出てくる。

今や教科書やノートですらこんな感じに機械が預かってくれるのでリュックの中には財布と筆記用具ぐらいしか入っていない。

スリッパを履いて靴を取り出し口に入れるとすぐに自分の靴箱へ転送される。

転送されたのを確認して、俺は靴箱を左に曲がる。

左に曲がってすぐに位置する階段を急いで登り、ようやく二階へ到着する。


「あれ、一年生だ!」

「何でまたこんな時間に?」


二階に到着して左に曲がると渡り廊下がある。

だが、三年生の女子生徒がよくこの場に集まってガールズトークを繰り広げている。

ちなみにこれを突破するのは、あまり話をしない俺にとっては至難の業である。