Snow Drop Trigger

その声音の人物達が、俺の視界に入ってきた。

涼弥が座っているのを考慮したのか、その人物達は俺の真正面にやってきた。

ベッドを挟んでの初めての対面に、俺はその人物達をまじまじと見た。

俺から見て右側に居る人物は、少しだけ茶色がかった髪を緩くウエーブさせたようなふんわりとしたショートヘアが特徴の女子高校生。

涼弥や亜衣や桃瀬と同様に学校指定の制服を着用しているが、スカートの丈は桃瀬級に短かった。

片耳に小さな赤色のピアスを一つ付けている吊り目の女子は、俺に向かってニヤリと子供が悪戯を企むようなニュアンスで笑いかけた。

そして俺から見て左側に居るもう一人は、少しだけ茶色がかった髪がストレートのショートヘアの男子高校生。

隣の吊り目の女子よりも背丈は高く、目が悪いのか黒縁眼鏡をかけていた。

そして此方は、片耳に小さな青色のピアスを付けていた。

男子高校生の方は俺をチラリと見た後、興味無いような雰囲気を醸し出しながら目線を逸らした。


「二人はね、転校生なんだよ」


俺が疑問を投げかける前に、花瓶に花を生けてきてくれたらしい亜衣が康介の横から顔を出した。

果物のバスケットの横に花を生けた花瓶を置いた亜衣は、俺の右側に立って転校生らしき人物達の紹介をした。


「ナツハラ シュウコさんと、ナツハラ シュンヤ君。
双子なんだって」

「双子……?」


そう言われて見れば何処となく顔が似ている。

まじまじと彼等を見ていたら、多分シュンヤさんの方が口を開いた。


「春に弓矢の矢で、春矢」

「あー。
アタシは秋に子供の子で、秋子」


そう言ってフイッと目線を逸らす春矢さんと、悪戯好きな雰囲気を醸し出している秋子さん。

この時期に転校生なんて珍しいなと思いながら、俺は彼等に差し出された手を握ろうとしてようやく気が付いた。


「あ……」


そういえば、涼弥が俺の左手を握っていたんだった。

右手は点滴を打っているから余り動かしたくは無いのだがと思っていたら、涼弥と目が合った。

泣いたから少しだけ目が赤くなっているものの、友人達の前で俺と手を握っていたのをようやく自覚したのか顔を真っ赤にして勢いよく立ち上がる。

そして口をパクパクと動かし、半ばパニックになりながら病室から出て行ってしまった。

その後を満面の笑顔で出て行く桃瀬と、「お大事にな」と俺に笑いかけ後を追う康介。

マイペースにタブレット端末の上にチョコレートのお菓子を置いて「お大事に」と呟き出て行く悠太。

それを追いかけようとする亜衣だが、俺と転校生達を見て立ち止まる。


「あー、大丈夫大丈夫!
アタシ達は少し話してから行くから!」


秋子さんの言葉を聞いた亜衣は、俺に「また学校でね!」と言って病室から出ていった。

残されたのは、悪戯っぽく笑いながら病室の外に手を振っていた秋子さん。

そして目線を病室の窓の外に向けながら眉間に皺を寄せる春矢さんと俺の三人だ。