【貴史 + 蘭子】

side 蘭子






車の中は耳触りのイイ今年流行りのヒップホップ。



「ナニ食べよっか~?」



小気味なドライビングテクを披露しながら運転手が鼻歌のように言った。






大学生。

ちょっと大人で

顔もよし。

そこそこモテルので女にガッついてないし、扱いもウマイ。

中の上流家庭で、金払いも良し。




トータル、高得点。








……なんだけど。








車はちょっと洒落たイタリアンレストランで停まった。


それを眺めて、アタシは踵を返した。





「え゛っ。ちょ…蘭子?」


「気分じゃなくなった。ゴメン帰るバイバイ。」




慌てる男を置き去りに、アタシはその場を去った。