「碧はひとりじゃないから。あたしがいるから」



蒼唯ちゃんは、偽善者で醜いこんな僕のそばにいてくれる、と。


曇りのないあまりにも綺麗すぎる目で言ったんだ。


もうひとりで耐えなくていい。もうひとりでぐちゃぐちゃな気持ちを抱えたままでいなくていいんだ。
そう思うと、涙が出てきそうで。


この時に、僕は彼女に恋をした。


この澄んだ青空みたいな、心の持ち主の彼女に。


でも、好きだということを伝えるには、僕はまだまだ弱い男だった。
蒼唯ちゃんは強いと言ってくれたけど、彼女の強さには到底及ばない。


少なくとも、蒼唯ちゃんに救ってくれた恩を返してからでないと、気持ちを伝えることなんてできない。


そう思って、俺は気持ちを秘めたまま、このかわべで、ふたりだけの時間を過ごし、ふたりだけの想い出を作っていった。


蒼唯ちゃんも、僕と同じ気持ちだったらいいな。もし、今はそうじゃなかったとしても、いつか振り向いてもらえるような男になれるように頑張りたいな。


隣で笑う彼女を見ながら、毎日のように思う。


川に捨てられた子犬に、2人で“ソラ”と名づけた時も、ソラが大きくなる頃には告白できるだろうか、そんなことを考えていた。