「本当なんだね……。こんなことってないよ……」


泣きじゃくるあたしを、碧が優しく抱きしめてくれたけど、その腕にその胸に、以前のような温もりはもうなかった。


それが、またあたしを悲しくさせる。


「正体がバレてしまったあとでは、もう今までみたいに人間と同じようにはできないんだ。ごめんね」


それでも、あたしをぎゅっと強く抱きしめて、泣き止むようにと頭を撫でてくれる碧。


それだけで充分だったから、あたしはちぎれそうな勢いで首を横に振った。


「……さて。どこから話そうか」


あたしが落ち着いたのを見計らって、静かに碧が口を開く。


「蒼唯、記憶は全部戻ったの?」


「まだ、少しだけ……。今ここにいる碧が幽霊だったってわかったのは、これを読んだのと、お母さんに確かめたのと、今までの碧の言動から推測しただけ」


あたしは、強く握り締めすぎてくしゃくしゃになった手紙を見せる。


「母さん、蒼唯をお葬式に呼んでくれてたんだ。俺のために」


碧は、嬉しそうに目を細めた。


「母さんってばね、自分の名前の“縁(ゆかり)”が、色の“緑(みどり)”っていう漢字と一緒だと間違って覚えちゃってたらしくて。だから子供の俺に、自分とお揃いだと勘違いして“碧”って名付けたんだよ。可笑しいよね」


碧は、自分のお母さんが書いた文字を感慨深そうに指でなぞったあと、そんなことをあたしに話して微笑んだ。