お腹に子どもがいるからか、ユイはどんどんお母さんっぽくなっていく。
 ランシュのポジションは以前のような友人や弟から、すっかり息子に変わってしまったようだ。

 そう思うと、ちょっと寂しい気もする。

 けれど、おばあちゃんと暮らしたあの穏やかな日々、そして再び研究が続けられる未来と、同時に戻って来たのだから、これ以上贅沢は言えない。

 いつかユイ以上に、大切に思える女性と巡り会えるのかな——そんな事を考えながら、ランシュはラフルールの商店街を抜け、官庁街の方へ向かった。

 刑務所は官庁街の外れにあった。
 広大な敷地が高い塀で囲まれ、頑丈な鋼鉄製の扉に閉ざされている。
 見た目は科学技術局と大差ないが、来る者を拒む独特の雰囲気があった。

 少しの間外から様子を眺め、建物に張り巡らされたセキュリティをチェックする。
 さすがに一般企業や他の官庁舎に比べて厳しいが、コンピュータ制御の電子機器を欺く事はランシュにとっては容易い。

 センサの感度を上げて気合いを入れると、ランシュは入口横の守衛所に向かった。

 守衛に用向きを伝えると、大きな鉄の扉の横で、人用の小さな扉がスライドした。
 中に入ってすぐの小部屋で、手荷物と別々にセキュリティチェックを受ける。