「副局長に?」


 先生はニヤニヤ笑いながら席を立った。
 何か企んでいる。
 出入口に向かいながら更に続ける。


「オレはこれからあいつの小言を聞きに行ってくる。おまえもくだらない事を訊くなと一緒に怒られたらどうだ」


 どうやらこれから局長の仕事をするために、局長室に向かうようだ。
 企んでいる事が、あまりに子供じみていて呆れる。


「それはあなたの仕事ですから。オレは遠慮しておきます」
「遠慮するな。なんならオレの分までくれてやってもいいぞ」


 行くのを渋っているのか、立ち止まって食い下がる先生に、ちょっと意地悪をしてみたくなった。


「オレは副局長に怒られた事ってほとんどありませんよ。ひどく怒られたのは、免職になった時くらいです。副局長って昔から生真面目で厳しい人ですけど、プライベートでは優しくて可愛らしい人ですよ」