ロイド先生が嬉々とした表情でランシュに尋ねる。


「好きな女でも出来たのか?」


 何を期待しているのか、センサに頼るまでもなく丸わかりだ。
 ランシュの関心が他の女に移れば、自分が安心できるからだろう。

 ユイを好きな気持ちは変わらない。
 けれど想いは、恋愛感情から家族に対するそれへと変化してきている。

 なにしろこのラブラブ夫婦の間には、毛筋ほども割り込む余地はない。

 一度はユイを先生から奪ってやろうと思った事もあった。

 全くそんな気はなかったが、復讐をしに来た事になっていたし、愛する人を奪われるなんて、これ以上ない復讐ではないかと考えたからだ。

 けれどこの先も一緒に暮らしていく事になるし、データの上では息子になってしまったわけだし、このまま想い続けても不毛だと悟った。

 なによりユイが、そんな事は望まないだろう。

 こんなところは、合理性を重視する人工知能の計算結果なのかな、と思わなくもない。
 生身の人間だったら、不毛だと分かっていても想い続けるものなのだろうか。