ちよちよみちよ




しかし、高校生になってからの千代はますます扱いにくい。僕が何か言えば、『キモい』『ウザい』。先にちょっかいを出してくるのはいつも千代の方なのに。
昔はまだ素直さがあった。大きな目をパチパチさせて、僕を頼って来た事だってあったんだ。そんな千代の行いが、どれだけ幼い僕のアイデンティティーを育ててくれた事か。

ふむ。僕は小さな溜め息を吐き、隣で僕が貸した漫画を読んでいる宏樹に目をやる。
ああ、爽やかな横顔だ。睫毛も長いや。同じ男なのにこうも作りが違うと嫌になるな。考えてる事は一緒なのに。今、ヤツが笑いを堪えて読んでる漫画だって、エロギャグ満載だぜ。下品な笑いがウリで有名な漫画家なんだ。ブックカバーなんかしやがって、姑息なヤツだ。まるで文学少年じゃないか。この本は芥川だと宏樹が爽やかな笑顔で言ったのならば、大抵の女子は信じるだろう。疑うのは千代くらいか。いや、アイツだって騙される。

そうだ。僕と千代の間に入り込む溝が年々深くなってしまうのは、千代が僕に内緒で、大事なバージンをこんな爽やかなだけの男にくれてしまったから悪いんだ。そうに違いない。