「お前、夏休みさ、なんか予定あんの?」
「予定? 酒の仕入れの手伝いだろ。またみちよにコキ使われるんよ」
八月は客が少ないと言って、みちよは毎年嘆いてる。そうでなくても田舎のスナックだ。同級生の父ちゃんなんかが客になる訳だから、そんなに儲けも期待できない。
父さんが死んでから、みちよは女手一つで僕を育ててきた。夏休みくらい手伝ってやるさ。
「俺はオンナ誘って、旅行でも行くかなあ」
そう言って天井を仰ぐサワヤカボーイを、僕は思いっきりぶん殴ってやりたい。
大体、何でこんなヤツがモテるんだ。顔がよければいいのか。顔がよければいいんだな。ああ、千代、お前もそうだったのか。そうなんだな。なぜ僕の顔はこんな風に出来上がらなかったのだ。みちよが美人なら、僕だって美男子になるはずではないか。
『あんたは父さんにそっくりよ』
そう言うみちよの声が聞こえてくる。
『すぐ一人で突っ走るところも、真面目そうに振る舞っておいて、実はテキトーなところも。それからその顔。その情けない顔!』
年甲斐もなくキャピキャピと、目尻に皺を作ってはしゃぐみちよ。

