「何でキャバクラなの?」

僕の問いに、サワヤカボーイは考える人風にポーズをとる。美男子は何をやっても様になるな。
ああ、このキリッとした唇が千代の柔らかそうな唇をこうやってああやってむむむむむむむはあああ!

中二の花火大会の夜、千代と宏樹は初めてのチョメチョメを交わした。後日、それを宏樹の口から聞かされた僕のショックは言うまでもないが、中一の終わりから高一の終わり、つまり去年の冬まで二人は付き合っていたらしい。らしい、と言うのも、付き合い始めた事も別れた事も僕はクラスメイトの噂で知った。千代にとって僕はとことん蚊帳の外って訳だ。
あ、そうか。マーキングは僕にではなく、隣の宏樹にかもしれない。なんだ、今頃気付いた。

「知らない。けど、千代のやつ、お前のおかんに憧れてっからな。それでじゃない?」

大阪人でもないのにサワヤカボーイはお母さんの事をおかんと言う。何となく嫌だけどそこはスルーしておこう。
ついでに言うと、僕の母親は『スナックみちよ』というお店を経営している。