ざり、と砂の音がして、けれども彼女は起きる気配はない。

充分近くにくれば、やはりその顔はとても綺麗に整ってみえた。


「ん……隈が少しあるか」


眠れなかったのだろうか。

確かに、それならば今この状況にあってもなおすぅすぅ穏やかに眠るのもわからなくはない。


が、その隣にいるのが男であるからには話は別だ。

もしそれが俺じゃなかったら……なんて事を考えると虫酸が走るような感覚に襲われる。


……俺だから。

俺だから、君を無理矢理襲うことなんてしないけどさ。


でも、こんな俺でも――……一目惚れした女の子が隣に無防備に寝てちゃ手が延びてしまうんだよ。

まったく、これだから男はやんなるよ。


「……ん」


す、と彼女の頬を撫でれば、くすぐったそうに身をよじって砂に頬をつけてしまった。

こりゃ、起きたらほっぺに砂の後が付くな。

そんな事を考えながら、顔にかかってしまった長い髪の毛をかきあげがてら鋤いてみる。


俺の指の間をさらさらと抜ける髪の毛は、とてもさらさらしていて、ただそれだけなのにとても鼓動が大きく早くなったのがわかった。


あぁ、もう。


あぁ、もう……!


くそ、一目惚れなんて信じてなかったよ、俺は!

けど、


「……好きだ」


そんなたった三文字の言葉が不意に零れた。











(つん。)

(彼女のほっぺたは柔らかくて)
(また身を捩る彼女は可愛かった。)