ドライヤーをかけ終えたようで、耳に届いていた風の音を止めるように、かちりとスイッチを切る音がした。
当然のように、するりとあたしの乾いた髪からは凛の指先が離れていく。
「…凛」
「なに?」
あれ。まだどっか乾いてなかったのか?
そう的外れな質問をされて、思わず凛に見られていないからだろうか、苦笑してしまう。
違う。そうじゃなくて。
「…凛、なんであたしと付き合ったの」
口から吐き出した問い掛け。言いながら視線を窓に向ければ、欠けた月が見える。
それは今にもこの家に落ちてきそうだった。ゆらゆらと揺れているようにも見えて、やはり怖い。
ぱっと視線を元あった場所に戻して、次は耳に神経を集中させた。
「いきなりだな」
「…凛、あたしなんかよりもっといい彼女つくれるじゃん。なんであたしなの?」
「…なんで気になんの」
凛からの質問への解答はなかなか返ってこない。
それどころか質問に質問返し。溜息を吐き出すのも今じゃ億劫だ。

