暖かい風が髪に当たる。凛の指が髪と髪の間にするりと紛れて、風を通していく。
…随分と前からそうだった。凛はよく濡れたままでいるあたしの髪を乾かそうとしていた。
自分でやる手間が省けるのは有り難いけど、この歳にもなって人にやってもらうのでは、少なからず恥ずかしいけど。
それを言ったところで凛はドライヤーからは手は離さないだろう。
ある程度の予測はたてられる。諦めてタオルを握る指の力を少し緩めた。
「なあ、友梨、今髪伸ばしてんの」
「…別に?ある程度まで伸びたら切るけど」
「俺これくらいが丁度いい」
「…そうですか」
あたしの髪は大体胸元くらいまである。真っ黒な髪。
小さい頃から変わらず、いつもこれくらいの長さで留まっている。短く切ってしまおうとも、これ以上に伸ばそうとも思わない。
でもそろそろ美容院で毛先を切り揃えた方がいいかもしれない。
最近行ってなかったからな。少し伸びたかもしれない。

