死にたがり




ぎしりとソファが唸る。二人して並んで座る。


すると、「ドライヤーあっちじゃん」凛があたしに言った。

ドライヤーは洗面所だけど、…ああまたか。




「凛、あたし自分で乾かすからいいよ、やらなくても」

「暇なんだよ」

「…洗面所」

「わかってる」




諦めてドライヤーの置き場所を小さく告げた。

ふわりと凛からはシトラスの香りがした。洗剤なんだか香水なんだか。…多分前者だろうけど。凛のことだから。


リビングから洗面所へとドライヤーを取りに行った凛。

よくやる。本当に。



…今日もお互いの両親は帰りが遅い。いつものことだ。凛もあたしも文句を言うなんてしない。

そんなこと出来たのは、昔だけだ。凛はあたしに言いたいことを両親に言えと言ったけど。


それはもう出来ないな。
あたしに言える勇気と理由はもう無いのだから。




「友梨バスタオル邪魔」

「…凛」

「乾かすからどかして」

「…」




いつの間に隣に戻ってきたのだろう。

大人しく言われた通りにバスタオルを頭から取って畳んだ。


かちりとスイッチを入れる音がした。