死にたがり






***


あれから夕食も食べ終わって、結構時間が経ったと思う。

濡れた髪をタオルで拭きながらリビングに足を踏み入れれば。ソファからはみ出て見える凛の頭。




「…凛いつまでうちにいるの」

「長風呂だな」

「あたしが聞いてるんだけど」

「髪びしょびしょ」

「…だから」




髪が濡れてるのは仕方ない。お風呂上がりなのだから。

ちらり、壁にかけられた時計を見れば。短針は8時を少し過ぎていた。




「泊まっていくの?」

「俺が泊まっても友梨嫌がらないしなー。泊まろっかな」

「……」




拒否もなにもしないでおく。確かに何度か凛はうちに泊まってるけど。

家が隣なんだし、別にいてもいなくても距離感はさほど変わらないけど。




「友梨、こっち」

「…なんで?」

「いいから」




凛に呼ばれる。おいでおいで、瞳があたしに向かって呼び掛けてくる。

濡れた髪にバスタオルを被せたまま、ソファに歩み寄った。