死にたがり




そう言ってみせれば。観念したのか、リモコンを手に取った凛。


…あれ、珍しい。いつもだったら聞く耳も持たないのに。




「…」



…なんで今日は聞く耳を持ってるのか。


そこまで脳裏で考えたとき、馬鹿馬鹿しくなって辞めた。

単になにかが見たくなったんだろう。凛のことだから、ただ単につまらなくなったというだけだろう。


一人で納得してから、切った具材を炒めようと空いていた鍋にばらばらと入れていった。

たまにこうして夕飯まで食べていく凛。彼が何様なのかと言うと、結局はあの男に合う名称なんて見つからずに終わってしまう。

一度だけ聞いて見たけれど、彼の答えを聞くと、すぐに聞いた自分が馬鹿だったと後悔したのは懐かしい記憶だ。



『友梨なんか作って。腹減った』

『…は?』

『腹減ったんだって』

『…何様』

『【凛様】だけど。何?え?文句あんの?』

『……』




あの男からすれば、それが的確な解答だとでも思ったんだろう。

あたしはまさかそんなふうに返されるとは思っていなかった。彼なら言い兼ねないというのに。




「…」




ちらりとキッチンからリビングを覗いてみる。

ぽつんと置かれたテレビからは何の番組がやっているのかまでは凛がいて見えないが、テレビから漏れる笑い声は耳に届いた。