「やだよ」
「…なんで」
言いながら足をキッチンへと運ぶ。
冷蔵庫を開けて中身を確認する。…とりあえず何かしら作れる程度の材料は詰め込んである。
ばたん、冷蔵庫の扉を閉めた。
「あたし一人分しか作るつもりなかったし。まず凛の口に合わないよ」
「散々食わせといて今更なに言ってんだよ」
「その言い草はないと思うけど」
押しかけて作らせたのはどっちですか。そう言いたいのを胸の中で押し止めた。
そこで占領したソファに体を預けた凛があたしへと視線を寄越した。
「主が客を持て成さなきゃ、主客っつーのが成り立たないだろ」
「…」
「俺を持て成すのが友梨の役割だよ」
「…」
上手いこと言って自分は楽をするつもりなんだろう。
…仕方ない。ここで言い返しても屁理屈を言われるだけだろう。
「なに食べたいの」
「聞き分けだけは良いよな」
「別にあたしは一食抜いても構わないけど」
「体に悪いですよー」
ああもう、こっちは疲れてるのに。
「ローストビーフ食いたい」
「無理です」

