「護、起きてる〜?」
「…あ」
病室にの扉からひょっこりと顔を覗かせて護を確認する。
私に気づいた護は、驚いた顔をしていた。
ちゃんと中に入って護のベッドの前に立つ。
「覚えてる?
私のこと…」
「うん。
昨日来た人…」
昨日来た人…か。
まだ記憶戻ってないんだね。
まぁそうだよね…。
そうやすやすとは戻らないか…。
「ねぇ」
「ん?」
「俺とあんた…。
どういう関係?」
「え…」
それは…恋人…だけど…。
今の護にそんなこと言っても困らせるよね…。
「…幼なじみ…だよ」
「幼なじみ…。
そっか、幼なじみか」
「うん…」
チクンと胸が痛む。
本当のことを言いたい。
幼なじみだったのは前までで、今は恋人だよって…。
でも…ダメだ…。
痛む胸を右手で服ごとギュッと掴む。
「…どうかした?」
「ううん、何でもないよ…」
「そっか」
「うん…」
護の記憶が戻るまでは我慢しよう。
記憶が戻ったら…。
いっぱい″好き″って気持ちを伝えよう…。
「…そういえばまだちゃんと自己紹介してなかったよね?
私は杉本花蓮。
幼稚園の頃から護と一緒にいたんだよ」
「ふ〜ん。
そんな昔っから俺たち一緒だったのか…」
「うん…。
あ、護は自分のこと聞いた?」
「あぁ、父さんと母さんって人から聞いたよ。
俺からしたら、知らない人たちなんだがな…」
「護…」
「恐いよな…。
俺は覚えてないのにあっちは知ってるんだから…」
少し視線をそらして寂しそうな顔をする護に、私の胸はもっと締め付けられた。
護…それって私にも言ってるのかな…。
黙っていると、護がハッとして
「あ、今のはお前に言ったわけじゃ…!」
と慌てていた。
そんな護が何だか可笑しくて、クスクス笑ってしまった。
「な、何…?」
「何だか、護見てると可笑しくって…」
「……?」
護にはよくわかってないみたいだったけど、笑顔になった。
お互いクスクスと笑あう。
こうしてると、前に戻ったみたい…。
それからは護に昔の話を聞かせたり、雑談をしたりして時間が過ぎていった。