雨は見ている

私たちの恋は雨と共に始まった恋だから

いつも、どんな時でも、雨は私たちと隣り合わせなんだ。





雨は見ている。

私たちをずっと雨は見ていた。





ねぇ、キョウちゃん
次に私たちが会う日のお天気はきっと雨だね。


雨が降る日は
私たちに素敵なことが起こるシグナルだもの。





そんなことを思いながら中目黒駅を降りて、おうちに向かってテクテク歩いていると、カバンの中でピリリと携帯が鳴る。



慌てて取り出すとキョウちゃんからメールが届いていた。





そのメールには


【今日の天気は雨。
雨を見ると…イヤでも美織を思い出すな。】


そう書いて
フロリダの雨模様を撮った写メが添付されていた。





そのメールに


【こっちも雨だよ。
私もちょうどキョウちゃんのコト思い出していたところ。】


私は笑いながらそう返す。






幼なじみだった二人

他人になった二人

思いが通じ合って恋人になった二人を雨は見ていた。




雨が見ていた一部始終




雨が見ていた恋模様




きっとこれからも続いていくんだろうな。


小さな清流がいずれ大きな川となり大きな海に流れていくように、私たちの愛が変わっていくのをずっとずっと雨は見ている。





雨がくれた私達の恋


雨の中で紡がれる、私たちの恋



「……好きだよ、キョウちゃん。」



雨が降る黒くて大きな空を仰ぎながら
私は小さく小さく
そんな一言を呟いた――……




【雨が見ていた・Fin】