「なんだ、待ち合わせなのか」


いつもはカウンター席に座る柚希が、窓際のテーブル席に着いたからだ

窓からは、ウッドデッキに並べられた花々がつかの間の日差しに顔を上げているのが見える

ここに飾ってある花や観葉植物は、ほとんどが柚希の店から買われたものだった


政宗はなんだかんだ言いつつも、親友を大事にする男なのかもしれない



「ああ、ちょっと姉さんとな」


「へぇ、珍しいな。咲子さんと会うのも久しぶりだ」


政宗は、薄いレモンの浮いた水を柚希に差し出しながら、とくに表情を変えずに言った

こいつが表情を変えること自体あまりないことだけど、少しは感情を表に出したほうが可愛げがあていいと柚希は常日頃から思っている


「ま、俺もそう頻繁には会ってないんだけど・・・」


昔、咲子は政宗が好きで告白したことがある

ま、予想はしてたけど結果は上手くはいかなかった

だから、ここを待ち合わせ場所にするのもなんだと思ったが、咲子の方からここで待ち合わせしようと言ったのだから仕方がない

きっと咲子にとって、もういい思い出になっているに違いない

なにせ、もう結婚して子供もいるのだから


政宗に至っては、昔からよくモテてて告白も慣れっこだったから、もしかすると咲子に告白されたことさえ覚えていないのかもしれない

こういう親友をもつと、一度そんなモテる男になってみたいと思ったりもする


ま、それは無理だとして、とにもかくにも、我が姉が好きになるのも無理がないぐらい、こいつは女にしたらいい男なのかもしれない



「とりあえず、ミントティーくんない?」


「了解」



容姿端麗で、手先も起用、それでいて美味しいお茶を出せるのだから、こいつは本当に神から二物も三物も与えられていると、ため息をつきたくなる柚希だった


だけど政宗のフレーバーティはどれも絶品だ

柚希は爽やかに香るミントティを飲みながら、気楽に姉を待つ

これから咲子とどんな会話になるのか予想だにするはずがない