「・・・・重症だな」



自分の妄想があまりに酷いので、思わず独り言を呟いて苦笑いしてしまう


週二回あるフラワーアレンジメントの教室も、今週は二度終わってしまった

今日こそは、きっと来るんじゃないかと、待ちわびている自分がいた


”片田 李生”


その人を、自分はあの日からずっと待ちわびている

どうしてあの時、連絡先を聞かなかったのだろう

そうしたら、こんな妄想にふける前に彼女を誘えたはずだ

いや、あの時は聞ける状況ではなかった



甥っ子の前で、しかも予期していなかった10年ぶりの再会で動揺している自分には、そんな機転などきくはずがない

心の隅では、このチャンスを逃したらダメだとわかっていても、李生がなにか口を開くたびに、李生が声を出すたびに

鳴り止まない鼓動に 落ち着け と命令するしかできなかった



きっと匠の母親、自分の姉に電話すれば、連絡先ぐらい教えてくれるかもしれない

でもそうする勇気も、実はないのが現状だ