#8


「これで最後!よしっと。あ~~~っ、今日も終わったぁ~」



柚希は前に出した鉢植えの最後を、中に運んで店を締めた

う~んと背伸びをして、凝った肩を交互にほぐしながら、ふ~っと裏に置いてある椅子に腰掛け、店と裏を仕切っているガラス戸を閉める


そして、ジーンズのポケットから革のケースに入った煙草を取り出すと、その一本に火をつけた

仕事中は吸わないが、終わると店の裏で一本吸うのが、柚希の日課のようなものだった


別に煙草など吸わなくてもいられるのだが、いつの間にかこの終わりの一本が習慣になっていた

もう吸ったら、絶対に花に触れないという自分だけの条件でだ



煙草を吸いながら、薄暗く非常灯の緑色の明かりしかついていない店の中を、ガラス越しにぼ~っと眺める

普段なら、今日仕入れた花がどうだったとか、客の反応だとか、ひとり一日の反省に浸る

だが、ここ最近の柚希は違った



煙草を吸いながらぼ~っとしているのは同じだが、いつも同じ花ばかり薄暗い中見つめてしまう

色などはっきり見えないのだが、自分で並べている花の場所ぐらいわかる



”ブルーローズ”



その花をぼんやり眺めて、毎日同じことを考える

いや同じことではない

次第にその考え、いや妄想というべき事柄が、自分でもエスカレートしていると感じる