「ぁ、先輩、忙しいのに長々引き止めてすみませんでした。でもいろいろ聞けて良かったです。

それに俺たちのこと、認めてくれてありがとうございました!!」


匠は深く頭を下げた


いや、認めてねーけどなと東吾は心の中でつぶやいた

とにかく、姉貴と匠は別れさせたい

でなきゃ、匠が傷つくに決まっている

俺はこんなに純粋な後輩を傷つけたくない


東吾は今度姉に会ったら、言ってやろうと思うことをたくさん胸にしまって、匠と別れた


数歩歩いて振り向くと、匠も丁度振り返ってまた頭を下げた


東吾はお返しに笑って片手を上げた


「なんだかな~・・・」

その笑顔とはまったく合わないため息のような一言を吐いた


実は最近、李生の元彼とよく研究室で会っていることを言わなかった


「ま、話長くなりそうだし、いっか」とむず痒い頭をガシガシと掻くと


「さてと」



今にも泣きそうな寒空の下を、東吾は大学院の研究室へと急いだ