「匠!!待てって言ってんだろ!?」


聞こえないふりをしているのか、匠はズンズンと早歩きで先を行く

だがダッシュで追いかけている東吾が、追いつかないわけがなかった



「こら!!聞いてんのかよ!つーか、バレバレだって!」


東吾は匠の肩を掴むと、「観念しろ!」と言った



「す、すみません!!先輩っ!!」


匠は東吾に深く頭を下げるしか出来なかった


「ばか、別に俺に謝られたてしょーがねーんだよ。

それより、お前大丈夫かよ?俺はそっちが心配だぜ。姉貴もう28だぞ、10も離れってっし、・・・じゃねー、こんなこと言いたいんじゃなくて、えっと、そうだ!

受験大丈夫かってーの!この時期にもうすぐ三十路のおんなに熱上げてる場合じゃねーって!

俺は、そんな風になるために、姉貴を家庭教師として紹介したんじゃねーぞ」


「べ、勉強のことですか?ならそれは大丈夫だと思います。だって俺、李生さんに褒められたくて、前に増してすっごい勉強頑張ってますし、確実に成績もあがってます。

希望している大学には、きっとこの調子でいけば大丈夫だって、学校の先生にも言われてますし・・・

全部李生さんのお蔭なんです、だから・・・・」



・・・だから、なんだよと東吾は言いたかったが、黙って匠の言葉を待った



「・・・だから、俺と李生さんのこと認めてください!!東吾先輩!!」



匠は顔を真っ赤にして東吾に言った




・・・おいおい、マジってか


東吾は急に頭が重くなった気がして、額に手を当てて頭を支えた

この状況は一体なんなんだ

てか、俺は何のために匠を追いかけて来たんだっけ?