「せ、先輩も元気そうで良かったです、あの、俺、よ、用があるんでこれで失礼します。先生ありがとうございました。じゃ、先輩もさようなら、おじゃましました!」


匠は早口でそうまくし立てると、東吾の横を通り過ぎて慌てて玄関に向かった


そりゃ、慌てるよな~、この状況じゃ、うん、わかるわかると東吾は思いつつ、

いやいや!そんな落ち着いたことじゃねーだろ!!

ちょっと待った~!!!

と、大学の研究室で二日徹夜して、少々汚れた髪をガシガシ掻くと


「匠!!!俺もすぐ出るから待ってろ!!」と自分の部屋から着替えを取り、カバンに突っ込むと匠の後を追う

スニーカーに足を半分入れて、玄関のドアに手をかけたとき、おっとっと、そういやと李生を振り返り言った



「姉貴、今度会ったら話あっから」

と、李生の返事も聞かずに出て行った


「ぁ、うん・・・」


李生は風のように去っていったふたりを呆然と見送った



東吾に、弟にバレてしまった・・・・


李生はひとり取り残され、東吾の話、それが匠のことだろうと察しがつくだけに、ため息をつくしかなかった