#7


「ただいま~。姉貴、いんの?」



李生の弟、片田東吾(カタダ トウゴ)がそう声をかけながら、家の中に入った

ただ玄関に、姉の靴の他に、もうひとつ男物の靴があったので、彼は遠慮がちに声を出した

男物といっても、学生が履くようなローファーだった


・・・・まさかと思いつつ、彼はリビングに立つ



すると、リビング右側の李生の部屋から、焦った表情の李生が出てきた

微妙に髪が乱れているのは気のせいか?


「と、東吾、どうしたの?今日も研究室に泊まりだって言ってたのに・・・」


顔が引き攣った姉はいかにも怪しかった

しかも、あの玄関の靴の主がリビングにいないとなると、自分の部屋はなしにして、姉の部屋以外考えられなかった


・・・・・まじか~


東吾はため息をつきそうになるが、真相を知らないうちに姉を責め立てるのも間違っている


「あ?ああ。また行かなきゃいけないけど、着替え取りに来ただけ。なんかまだ長引きそうだから」


「そ、そう。あまり無理しないでね、部屋の入口に洗濯物置いてあるから」


李生は髪の乱れに気づいたかのように、不自然に髪をしきりに撫でている

こういう焦った姉を初めて見た気がする


・・・・そりゃそうだろ、弟のいないあいだに男連れ込んでるんだから