あの頃、この制服の背中に飛び込めなかった自分が

今はなんていとも簡単に飛び込めてしまうのだろう

きっと彼のからだもこんな風に華奢だったに違いない

だからわたしは彼を選ばなかった

いや、選ばなかっただなんておこがましい


自分を守るすべは自分で選んだ、ただそれだけだった

そして彼も、わたしを干渉しなかった、ただそれだけだった

けしてわたしたちは、想い人同士でなかったのだから



「しゃべんないと・・・・キスしちゃうぞ」


背中から伝わってくる匠の鼓動

それが数秒のうちに早くなっているのを感じる


「・・・いいよ」


わたしは不安で不安で仕方がなかった

誰かの腕の中で

誰かとつながっていたかった

けして離して欲しくないと