匠は「わかった」そう小さく言って、ただ李生の胸に顔を埋めた


強引に何かしてくることもない匠を時々不憫に思ってしまう

そして突き刺さるこの胸の淋しさはなんなのだろう、わたしの中のほんの少しの母性なのか


胸のぬくもりにすがってくる子猫のような匠の頭を優しく撫でてやる


そうすると「俺、本気だよ?」と小さく言う

「わかってる」そう言うと「だから結婚しよ?」と言う



なんて軽はずみなプロポーズ


すでに両親を亡くして、年の離れた弟の大学院の費用と日々の生活費を稼ぐのに

塾の講師と休みにはこうして家庭教師も勤め、自分の休日等ないに等しい生活のわたし

それを自分の手で稼いだこともない子供が、このわたしのすべてを背負えるとでも言うのか