「なにしてんの?」
ビクッ
わたしは思わず肩を上げて驚いた
突然、後ろから声が聞こえたからだ
恐る恐る振り向くと、誰かが立っていた
しばらく目を瞑っていたから、その人物が誰だかすぐにはわからなかった
パチリと強めに瞬きして見つめると、それは同じクラスの伊藤柚希だった
「・・・・・」
わたしは柚希の問いに答えなかった
嫌がらせをしてくるのは特定の女子生徒だったが、とくにそれを止めるでもない周りもわたしとっては同罪だった
「川、流れ速いね。昨日、雨だったからだろうな」
「俺も、ここ座っていい?」
「坂野辞めたな、まさか辞めると思わなかった。片田もだろ?」
初めてこの人に名前を呼ばれた気がする
そもそも話したことなどなかったのではないか
そして、この人も、坂野が辞めたのはわたしのせいだときっと言いたいのだ
わたしは何も答えなかった


